犬に敬礼???

 
 これは航空学生に入隊したばかりの頃のお話です。

入隊当初、私達の階級は「2等空士(昔で言う二等兵)」でした。

一番下っ端なので基地内でスレ違う人達すべてに敬礼をしなければならず、なかなか気の休まる暇のない日々でした。

ある日、射撃訓練の後に必ず行われる 「銃清掃」での出来事です。
同期のひとりが64式小銃の部品を床に落としてしまいました。すると、それを見ていた助教が同期を厳しく注意し、こう言いました。「64式小銃は3等空曹だ(昔で言う軍曹)。おまえらよりも階級が上なんだから、もっと敬意を持って取り扱え!!」....と。

なんと、私達は64式小銃以下の存在だったのです!!当時、恐ろしい先輩や厳しい訓練で精神的にかなり参っていた私達にとって、この事実は結構なショックでした。小銃よりも下っ端だったなんて、まさに「キング・オブ・下っ端」です。
2等空士に清掃される64式小銃3等空曹殿▲

その夜、同じ部屋の先輩にこの事を話した所、 更にショックな事実が明らかになりました。
先輩の話によると、基地 警備の為に飼われている警備犬にも階級があって、実は3等空曹だというのです!
なんと私達は64式小銃どころか、警備犬以下だったのです!

私は混乱しました。基地内で警備犬と出会ったら敬礼をしなきゃいけないのでしょうか!?それよりも、警備犬はちゃんと返礼してくれるのでしょうか!?自衛隊の
階級制度の厳しさを目の当たりにして、やりきれない気持ちの私達でした。

それから数カ月経った ある日、訓練中に突然、基地内放送で「全員建物の中に避難せよ」との命令がありました。どうやら、警備犬が1匹檻から脱走して基地内をうろついているらしいのです。飼育員以外は誰にでも襲い掛かるほど獰猛な性格の基地警備犬ですから、これはかなり危険な事態です。数時間後犬は無事に捕獲されましたが、基地内はかなりの大騒ぎになりました。
「自由になりたかった」と語るジョン3曹(仮名)▲


その後のうわさで、問題の脱走警備犬は「3等空曹」から「空士長」に格下げ になったと聞きました。
何でも、エサのグレードが、少し下がったとか。
ほんとかどうか解りません..........。

......END